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2025年05月08日
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最後のレモンキャンディー

2007年02月16日

ちいさな ちいさな 欠片。
あなたにあげる、その切ない味。

 

少女はふと黄色い綺麗な飴玉に目を奪われた。
瓶にたくさん詰められたそれは、宝石のようで、しばらく眺めていた。

「おじょうちゃん、ほしいの?」
「知らないおじさんにはついていっちゃダメって言われたアル」

後ろから降ってきたその声に冷たい言葉で彼女は返した。
神楽、知らないなんてひどくない?

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かえっておいで (銀神)

2006年08月13日

この時間はなんとも優しい空気につつまれるのだ。
それはとてもあの人の雰囲気に似て。

 

「帰るんですかィ?」

私の目線少し上にある、栗色をした頭の男がそう言った。
まるで、その言い方は置いていかれた子犬のように寂しそうなのは
本人は気づいているだろうか。

「帰るヨ。」
私は振り返らずに歩みを進めた。
「待ってくだせぇ、途中まで送りまさァ」

この男とこうやって並んで歩くのはそう珍しい事ではない。
いつも町で出くわしては戦いを挑み、挑まれ、戦い、戦い抜いて、疲れては休み、疲れては口げんかした。
そうするのはまったく嫌では、ない。
しかし、私にはいつも必ず頭に置いている人がいる。
その人は、面倒な事が嫌いである。
一度だけ いつものように、この男と戦った時に公共物破損とかいうもので迷惑をかけたことがあった。
この隣の男と同じ服を着た奴らが彼とこの男をを攻めた。
彼は何も言わなかった。私には何も言わなかった。
ひとこと「もうすんなよ」
その人に置いてもらっている存在なのだ。私は。

迷惑をかけてはいけない。いけない。いけない。

それから、私は一度戦う事をやめた。この隣の男の挑発にものらなくなった。
「どうしたんでぃ?腹の調子でも悪いんですかぃ?」
とニヤニヤしたような顔で(今思えばセクハラなのではないだろうか)言われた時だって我慢した。

もっと戦いたい。戦いたい。戦いたい。

わかっているのだ。この呪われた血がこびりついているこの身体は求めているのだ。
他の者の血を、 欲している。
だからこうして 彼の目を盗んで、周りのものを破壊しない所に黒ずくめの男を連れ出し、
戦っている。
でも、あの綺麗な髪のあの人には嫌われたくない。
知られてはいけないのだ。秘密の戦闘。
ああ、こんなにも愛しい。

「お前なにいらいらしてんの?」

夜。自身が止まり木にしている家に帰って、お風呂に入ったあと
その綺麗な髪のあの人は私にそういった。
しかし、言えない。私の汚いこころを。この人にだけは知られたくはなかった。
「いらいらなんてしてないアル。」
「ふ~ん…」
どきどきした。見透かされているのではないだろうか、と。
「最近お前おとなしいね。」
横から私の顔を覗き込み、まじまじと見つめてくる。
やめて欲しい。
「そんなこと ないヨ」
恥ずかしい。恥ずかしい。
なぜそう思うのかは、私はまだよく分からなかった。 まだ。

ぽん、と不意に私の頭の上に温かいものがのった。
「…?」
「無理すんな」
見上げると、綺麗な顔が目の前にあった。
どうやら頭の上にのっている温かいものはこの人の手だったようだ。

むり?

「し てないヨ?」
「あ~の~な~ 子供はそんな遠慮しなくていーの。そりゃお前ががっつんがっつん食ってる時は、マジ勘弁してくださいって思うけどね?そんなの俺が大人なんだから子供に飯食わせるのは当たり前って言うか、俺が食えなくても食べさせるべきって言うか…あ~…何いってんのか分かるか?」
綺麗なこの人が、しどろもどろに喋るさまは少し可笑しくて笑えた。
「わかんない。銀ちゃんちょっと面白いネ」
「あ~…とにかくだ。多分アレだろ?このあいだの駄菓子屋破壊した時の。あれ気にしてんだろ?」
「……………」

ばれていたのだ。ああもうこの人はなんでもお見通しだ。

彼はにっこりと笑って
「今日も総悟くんと戦って楽しかったでしょ」と私に言った。
びくりと自分でもわかるくらいに反応してしまったのが分かった。
「銀さんなんでもお見通しだからね。うん。
お前が何心配してンのか知らねェけどさ、お前は外でいっぱい遊んできて、んで飯食って、風呂入って、出すもんだして…あいてっ」
「レディーにそんなこというんじゃねぇ」

はっ…!

ついツッコミを入れてしまった。
「ははっ、そんでここにいっつも元気で帰ってきてくれれば 銀さんなんも文句ねぇわけ。」
怒らずに笑った顔に、私は不思議な視線を送っていた様に思う。
彼をなぐったその握った拳を解いて、私は彼の服を握る。
「か、 帰ってきてもいいアル か?」

なにがあっても?

その答えが怖くて 下しか見れない。
服から すら、と伸びた彼の腕はとても大きくてしっかりしている。
そこしか見れずに、うつむく私に再びあの温かいものが降って来た。

「かえっておいで」

じわ、と胸が熱くなったのを感じた。
「かえっ…て きて…」
「うん。いいよ。」

思えば私はいつも待つほうで、待つ人の気持ちはすごくわかっている。
寂しくて寂しくてしょうがない。
いつの日か期待は、あきらめに変わって もう待つものかと、思った。

ああでも。
待たれる人の気持ちはこんなにもこんなにも嬉しくて、早く待つ人のもとに行きたいと思うものなのか。

そう思うと、もしかしたら私が待っていた人は 私の元に帰りたいと思っていたのかもしれない。
でも、私と私を産んでくれたあの人をあんなに待たせたその人が、いまだむかつくのでその思考ははすぐに捨てたが。

「何があっても かえっておいで  神楽」

愛しい愛しい。 あなたのもとに今日もかえります。

この時間はなんとも優しい空気につつまれるのだ。
それはとてもあの人の雰囲気に似て。

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