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2025年05月10日
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一生、だなんて、見たこともないくせに

2006年09月14日

「なぁ、土方って好きな奴いねぇの?」

思わず煙をぐ、とへんな所に入れてしまってむせる。
だいじょぶ?なんて言われたりして。
涙目になりながら 大丈夫だというと、興味もあまりないようで そう。としか言わなかった。

俺はお前が好きなんだ。

そんなこと、言えるわけも無くて黙って目の前の男を見つめた。
銀色の髪が今まさに沈もうとしている夕日の光に透けて美しい。
坂田銀時。万事屋というなんともあやしい職業をしている、男 である。

男が好きだなんていったらこいつは何と言うだろう。
しかも、それが自分だなんて知ったら。

偶然にも今日土方は巡回にまわっていて、歌舞伎町をうろうろしていた。
そうしたら、なんと向こうの方から声をかけてきて、パフェをおごってくれなどと甘えてきたのだ。
その事実が嬉しくて、目を細めた。
そんな顔しないでお願い!と腕を肩に回されたりなんかして。

ぁあ、ここまで俺は来れたんだと思った。
いつも会えば喧嘩ばかりで、気になっているのに好きなのに、口から出る言葉はきついものばかり。自分が恨めしい。
しかし、こいつはそんな俺にパフェを奢れというのだ。
確かにたかられているのと同じだが、俺と一緒にいても平気にまでコイツはなったんだと思うとなんだか胸が熱くなった。
金ヅルでもなんでもいい。
こいつと一緒にいられるのならば…
しぶしぶ了承したフリをして、こいつにパフェを奢った。

「好きな奴なんていねぇ」
「いまでもあの人の事すきなんじゃねぇの?」

あの人 というのは沖田の姉のミツバ だ。
俺が純粋に愛した女。
商売や、そこらへんの女ではなく。
大切にしたいと思った女。
これからも、忘れない女。
生涯に一人だけの女。

「お前には関係ねェ」

そういって、土方はハッとした。
突き放すような土方の言葉に坂田が眉をよせたのが見えた。

ああ、またやっちまった

反省するとともに、どうしてか坂田の視線が気になり土方は目を泳がせた。
頼んだコーヒーはもうすっかり冷めていた。

「や、結構関係あるんだけどね」

関係がある?
どういうことだろう。
俺があの人を好きでなぜ銀髪が関係するというのだ。
まさかコイツもあの人の事が?

土方が考えて黙って俯いていると、坂田はパフェのスプーンを置いてそのまま席を立った。
土方はその様子に驚き、顔をあげる。

『かえっちまうのか?』
ただの金ヅルはそんなことはいわない。
言いかけた言葉を土方は飲み込んだ。

「ごちそうさん」
坂田は土方の隣まできて止まった。
土方はなんだろうと、首を傾げる。
あれ?と思った時は目の前が銀色だった。
銀色が離れて、ふわりと揺れた。

「美味かったぜ」
にやりと笑った顔がやけに印象的で坂田が居なくなった後も土方はぼう、とそこに座ったまま空をみていた。
触れた唇はそこから熱を帯びているかのように主張していた。

キスされた
その真意は見えないが、それだけのことで胸がいっぱいになった。
その事実だけで一生生きていけそうだと思った。



あの笑顔を自分は守らなければならなかった女。
銀色の眩しいほどの力で心の支えになる男。

どちらも土方の心にずっといて、離れない。




「あめぇ…」


口の中に広がる甘さはあの男の やわらかい銀色

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