忍者ブログ

[PR]

2025年05月10日
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

金魂設定

2006年10月04日
警察官設定で、金ちゃんと犯人を間違えて逮捕しそうになって…
PR

仮金魂

2006年10月01日

「愛してる」

そんな言葉に何度騙されるフリをしてきたのだろう。

「君だけだよ」

そんな言葉に何度、現実だと錯覚しかけたか。

夢物語のようなこの夜のネオンが主張するこの場所を何度訪れるのをやめようと思ったか。








「トシちゃん。きいてる?」
艶のある声が耳元でささやかれた。
その声の主は、自分の首に腕を絡ませて、ソファごしに自分を抱きしめてきていたようだった。
胸元がざっくり開いたチャイナドレスを身にまとい、妖艶な笑みを浮かべるのは神楽だ。
ここのホストクラブのオーナー兼経営者である。
その神楽に腕をまわされている、ここのホストクラブに新しく入ったばかりの土方は考え事をしていたので全然聴いていなかった。
「ぁあ…すまねぇ…ちょっと考え事しててな」
「金ちゃんのこと?」
ずばり言い当てたと得意げに神楽は笑う。
キレイに笑うけれど、目は笑わない女だなと土方は思う。

「トシちゃん金ちゃんに何かされたカ?私トシちゃん大好きネ。いくら金ちゃんでも許さないアル」
ぎゅう、とまわされた腕に力が入った。
「いや、そんな何をされたっていう訳じゃねぇよ」
「ホントカ?」
ああ、と返事を返せば納得したように笑顔をよこす。

「ちょっと、いつまで俺の土方にくっついてるわけ?」
びく、と体がその声を聞いた途端に跳ねた。
『俺の』
それを聞いた土方の心臓が、どくどく、と鳴り出したのが聞こえてきた。
金時が俺のことを…と、思いかけたところで土方はその思考を止めた。

違う。そうじゃないんだ。こいつの言葉には意味なんてない。

土方はこの金髪のナンバーワンホストに淡い想いを抱いている。
初めて、町で声をかけられた時、いわゆる一目惚れってやつだ。
土方は俯き、金時と神楽の会話を聞いていた。

「いつどこで何時何秒トシちゃんが金ちゃんだけのものになったアル」
「うっせぇな。おめぇが連れてきたんじゃねぇだろ。俺なの、俺がこの子をスカウトした瞬間から俺のものなの」
ああ、そういう意味だよな と土方はぎゅうと目をつぶり、心臓の音が止むのを待った。
心臓は今、どくどくというよりも、つきりと痛んだ。
「……トシちゃんいじめるのやめて欲しいんだけど。だから金ちゃんには任せて置けないネ」
ちら、と神楽は土方を見たが、すぐに金時に視線を移した。
「いじめてねぇし。…まぁいいけどよ。土方の休憩終わりだから、俺ンとこきてよ。お仕事」
両手を広げて 来い と目で訴えられる。

「仕事ってなんですか」
土方は、目上の人間には決してタメでは話したりしない。
オーナーの神楽の方が金時よりも偉いし、敬語で話すべきなのだが神楽はそれを許さなかったので、いつもの自分らしい話し方をさせてもらっている。
土方はなんで金時は両手をひろげて待っているんだろうと思いながらも、おずおず、と立ち上がって金時の目の前に立った。
すると、すっぽりとその広げた腕で包まれてしまった。

「俺を癒してよ、ひじかた」
「ちょ…!なにすんだあんた!」

心臓がもたない。金時はいつもこのようなスキンシップをとろうとする。
土方はあまりこのような事に慣れていないために、おろおろと金時の腕の中で慌てふためいた。
「あ~…土方っていいにおいすんだよなぁ…しかもこの細い身体。女の子みたいに抱きやすいしなぁ」
「ちょ、何処触って…! いいにおいもしないし、俺は細くないです!来てくれた女に抱きしめさせてもらえばいいでしょう!」
「金ちゃんずるいよ。これがトシちゃんのお仕事なら私、今からお金だしてトシちゃん独り占めネ」
「だめ。お前は俺の太客ってことになってんだから。他のホスト相手はすんな。」
神楽は、まるで少女のように頬を膨らませ、ソファに座って腕と足を組んでいじけた。

「いいから離して下さい!」

まるで土方の意見を聞こうとしない金時に土方が痺れを切らせて訴えた。
「金ちゃん、他の女の子もいるのに。トシちゃんなんて必要ないアルよ」
ずく、と土方の心臓が痛んだ。
そうだ。金時はナンバーワンホストだ。女の子には不自由はしないし、ましてやこんな男なんかお呼びじゃないはず。

「俺、土方愛してるの。」
きゅうっと心臓をつかまれた気がした。
さっきから土方の心臓はおかしくなりそうだ。
「…は…?」
「愛してるんだ土方。お前だけだよ」

何度言われた言葉だろう。
そういって、俺をおとしいれるつもりなんだろう?
俺も愛してると返したら、まるで飽きたおもちゃを捨てるように、俺を手放すんだろう?
他の女たちに言っている所なんてごまんと見てきた。
金時にとっての俺は、なに?
男に…お金を落としていくわけでもないこんな男に、こんな言葉を降らせてなんの意味があるんだ?
わからない。
俺の方が愛してる。愛しているんだ金時。

止まない想いが溢れてきそうで土方は目を伏せた。

一生、だなんて、見たこともないくせに

2006年09月14日

「なぁ、土方って好きな奴いねぇの?」

思わず煙をぐ、とへんな所に入れてしまってむせる。
だいじょぶ?なんて言われたりして。
涙目になりながら 大丈夫だというと、興味もあまりないようで そう。としか言わなかった。

俺はお前が好きなんだ。

そんなこと、言えるわけも無くて黙って目の前の男を見つめた。
銀色の髪が今まさに沈もうとしている夕日の光に透けて美しい。
坂田銀時。万事屋というなんともあやしい職業をしている、男 である。

男が好きだなんていったらこいつは何と言うだろう。
しかも、それが自分だなんて知ったら。

偶然にも今日土方は巡回にまわっていて、歌舞伎町をうろうろしていた。
そうしたら、なんと向こうの方から声をかけてきて、パフェをおごってくれなどと甘えてきたのだ。
その事実が嬉しくて、目を細めた。
そんな顔しないでお願い!と腕を肩に回されたりなんかして。

ぁあ、ここまで俺は来れたんだと思った。
いつも会えば喧嘩ばかりで、気になっているのに好きなのに、口から出る言葉はきついものばかり。自分が恨めしい。
しかし、こいつはそんな俺にパフェを奢れというのだ。
確かにたかられているのと同じだが、俺と一緒にいても平気にまでコイツはなったんだと思うとなんだか胸が熱くなった。
金ヅルでもなんでもいい。
こいつと一緒にいられるのならば…
しぶしぶ了承したフリをして、こいつにパフェを奢った。

「好きな奴なんていねぇ」
「いまでもあの人の事すきなんじゃねぇの?」

あの人 というのは沖田の姉のミツバ だ。
俺が純粋に愛した女。
商売や、そこらへんの女ではなく。
大切にしたいと思った女。
これからも、忘れない女。
生涯に一人だけの女。

「お前には関係ねェ」

そういって、土方はハッとした。
突き放すような土方の言葉に坂田が眉をよせたのが見えた。

ああ、またやっちまった

反省するとともに、どうしてか坂田の視線が気になり土方は目を泳がせた。
頼んだコーヒーはもうすっかり冷めていた。

「や、結構関係あるんだけどね」

関係がある?
どういうことだろう。
俺があの人を好きでなぜ銀髪が関係するというのだ。
まさかコイツもあの人の事が?

土方が考えて黙って俯いていると、坂田はパフェのスプーンを置いてそのまま席を立った。
土方はその様子に驚き、顔をあげる。

『かえっちまうのか?』
ただの金ヅルはそんなことはいわない。
言いかけた言葉を土方は飲み込んだ。

「ごちそうさん」
坂田は土方の隣まできて止まった。
土方はなんだろうと、首を傾げる。
あれ?と思った時は目の前が銀色だった。
銀色が離れて、ふわりと揺れた。

「美味かったぜ」
にやりと笑った顔がやけに印象的で坂田が居なくなった後も土方はぼう、とそこに座ったまま空をみていた。
触れた唇はそこから熱を帯びているかのように主張していた。

キスされた
その真意は見えないが、それだけのことで胸がいっぱいになった。
その事実だけで一生生きていけそうだと思った。



あの笑顔を自分は守らなければならなかった女。
銀色の眩しいほどの力で心の支えになる男。

どちらも土方の心にずっといて、離れない。




「あめぇ…」


口の中に広がる甘さはあの男の やわらかい銀色

無題

2006年09月03日

俺はいつも、お登勢の説教や、坂本のおりょう先生話などを避けるために屋上に逃げ込んでいた。
屋上は授業中にたばこにうるさい生徒たちもいないし、(ぺろぺろきゃんでぃ食ってるっていってんのに)何より風が気持ちよかった。
心地よい風にあたっていると、頭がすっきりしてくるので好きだ。


ある日、屋上の鍵をかけ忘れたのを思い出した。
どうせ一服しようと思っていたのだ。
ちょうどいいとばかりに、屋上の扉をだるい体であけた。
ふと、目の前を見やると黒髪の男子生徒が入り込んでいた。
やべぇなぁばばあに怒られると頭をぼりぼりかいた。
ぼぉっとする頭で生徒を見る。

土方だ。

それに気づいたのはいいが、どう声をかけようか。
フェンスごしにはるか下にあるグラウンドの土を見つめている。
高い所すきなのかしら?

「何、君も自殺願望者?」

ぽかんと俺をみる土方がそこにはいた。
ああ、やっちゃったかな?
「来たかったから…」
だから鍵が開いていたから入ってきてしまったと。
素直で美人で…本当にカワイイなぁと思った。女の子だったらなぁ。
そんなに好きなのだろうか。怒られるのか覚悟しているだろう土方はフェンスからてこでも動かなさそうだ。
俺は屋上と書かれたキーホルダー付の2本の鍵をポケットから取り出し、片方をかちりと外して、土方に差し出した。
「じゃあ時々くれば?ここが先生に見つからない場所だからって、授業をサボるのに使わないんだったらあげる」
そのまま土方は鍵をみつめていた。
「無くすなよ。スペアそれしかないから」
そういってタバコをつけた。

土方は週に何度か屋上へ行っていた。
俺は帰る前に屋上に毎日のように足を運んだ。
土方が来ている時は、帰るのを促して帰った。
別に土方だって鍵をもっているのだからそんなことをする必要は無かったが、俺の足はいつも屋上へ向かっていた。



「せんせいー!土方君がいません!」

ある日午後の授業へいくと女顔の生徒、土方の幼馴染沖田くんが教えてくれた。
そう沖田がいうと隣の神楽の顔がゆがんだ。
神楽は俺に懐いている。と思う。神楽は去年からの俺の生徒だ。
去年はクラスにあまりいなかったのに今年はよく教室にいるようになった。
しかし、めずらしい。他人がいないというので顔をゆがませるようになるだなんて。
「銀ちゃん土方授業でないのおかしいネ!」
「そうなの?どうでもいいけど、先生でしょ。先生。」
神楽の台詞にすぐさま訂正を入れる。
「銀ちゃん!」
「直す気ないよね。いいけどね。先生めげないけどね」
「探してきて!!」

神楽に廊下に押し出されて、扉をしめられてしまった。

土方がいる場所なんてお前の方がわかるんじゃないのか。

ぼりぼりと頭をかいた。
言ったって行けと命令されるだけだ。
授業をやるより、土方を探す方が楽だ。
俺は廊下を歩き始めた。

ふらふらと廊下を徘徊した。
タバコをつけて、吸う。煙が肺に入ってくる感覚がした。
ああ、もうこっちの方が面倒くさいかも。
大体、律儀に土方なんて探しに行かずに、屋上とかでタバコふかしてるほうが俺らしいし…
今日なんてすごい いい天気だし、ばかばかしいし…
その考えに至って、少し考えた。

あいつも、もしかしたらいるのかな

屋上のドアノブをかちりとまわすと、あきらかに開いている。
きぃと静かに開けて中をのぞいた。
ああ、まっくろなやつがいる。

「土方」

土方はがばりと起き上がって驚いた顔で俺を見た。
「先生、放課後とか休み時間ならいいよって約束であげたんだけど。」
本当はサボることなんてどうでもいいのだが、一応先生でしょ。俺って。
タバコを床に落として、足でつぶした。
土方が言い訳を言ったりしてたけど、そんなのどうでもよくて早く教室に戻って欲しかった。
面倒くさい。

しゃがんで、土方と顔が近くなった。
ああ、ほんと綺麗な顔だな。
じっと見ていると、土方と視線が剥がせない。
土方が俺を見ていた。
なぜかそれだけで嬉しくなって、興奮している自分に気づいた。

「そんな見つめられると照れるんですけど?」

そう言って、土方ははっとしてうつむいた。
そんな仕草も表情もかわいいなぁと思う。
それから、土方は立ち上がって、フェンスに向かい俺にこういった。
「せんせい、俺ここから飛び降りて着地します」
頭ががつんと殴られた気がした。
平静を装ったが、それが余計に彼を煽ったようだった。
土方はフェンスを超え、何も頼りが無い場所へと降り立った。
俺は焦った。飛び降りるってどういうことか分かっているのかと。

いなくなる。
この子が俺の前から。

そう思ったら、真顔で土方にやめろと言った。
どんな表情か自分では分からないが、土方の顔が驚いていたので多分すごい顔だったんだと思う。
急に俺の目の前から、土方が消えたのが見えた。
フェンスをよじ登って、下を見ると土方はいなかった。
目の前が真っ暗になって、足が崩れた。

土方…!

少し角度を変えて見ると、少し床が出来ているところに土方は落ちていた。
怒鳴って土方を呼びつけ、そして抱きしめた。

華奢な体を自分の腕におさめると、やっと落ち着いた。
土方はずっとごめんなさい、と繰り返していた。
俺はその日腰が抜けたのだが、そのせいで土方に情けないと言われた。
すごく惨めな気がした。


その日から土方は俺を避けた。
屋上にも来なくなったし、授業中俺をみることもなくなった。
俺は

彼氏から紹介される彼氏。

2006年09月02日

自分はもっと冷静に対処できる人間だと思っていた。
こんなにも動揺して、狂いそうになるなんて。

がりがりと痒いわけでもないのに、癖でかいてしまう。
けだるい体でなんとか保って、授業をしている。
黒板に分かりやすいように、文字を書き連ねていく。
俺は、高校生の担任をしている。
お登勢という校長…もといばばあのコネで特にしっかりとした面接もせず、この学校に勤めはじめた。
特に、執着など無い。
楽なのが一番いい。
俺は一番面倒なことが嫌いだ。
4月の数ヶ月前にそろそろ担任をつとめてもいいだろうと言われ、
(まぁ確かに順番的には俺の番だった。)了承した。
一年目はまぁ普通のクラスで、初々しいピカピカの一年生が相手でとても楽だった。
しかし、二年目はクラス替えがある。そして年々一番のお荷物が集まると言われているZ組。
その担当にさせられた。
お登勢からクラスメンバーの資料を渡され、頑張れと商業担当の坂本に言われた。
うんざりであった。
顔を覚えるのは4月からでいいと、ばさりと資料をどこかへ放り投げた。
俺はそれを後から後悔する事になる。


Z組の最初の挨拶もすませ、自己紹介もしていたが、俺はさして興味が無かった。
2年間一緒ではあるが、名前や面なんてもの半年もすれば徐々に覚えていけるであろう。
焦るのは俺の趣味じゃなかった。

「よぉ、先生」
後ろから声をかけられる。相手はまぁ大体わかっている。
彼氏、だ。
別に俺は男などには興味はない。付き合うのなら断然女がいいに決まっている。
しかし、なぜか俺は女だけではなく、男にもモテていた。
俺は面倒くさくて誰から告白されても、あーいいよ~と軽く流していた。
まぁ数ヶ月も続かない、数日で終わる関係なのだが。
こいつも何人目かの 彼氏、 だ。
「なんだよ。また金せびりに来たのか?ぼっちゃんの方が金あるんだから、安月給の先生にたからないで」
Z組のおぼっちゃん、高杉晋助である。
おもしろそうだな、つきあえよ。といわれたのがきっかけだったろうか。
他の「彼氏」とは違い、熱っぽい眼差しを受けた事も無い。
とにかく冗談半分の付き合いだ。
どちらかと言えば俺がこいつのパシリになっているような気がする。

先生、立場ないわぁ…

「ああ、安心しろよ。もうおめーの彼氏でもなんでもねぇから。おめぇつまんねぇんだもんなぁ。さすが年食ってるだけあるっていうの?お前ももう俺の彼氏面すんなよな」
「あのねぇ先生はお前のことなんか最初からどうでもいいの。あと、先生に向かって偉そうだから君。」
ため息まじりでそう答え、彼氏でもなんでもないと言われ、安心さえした。
「次はさ、あいつ。狙ってみようかと思って。」
くい、と親指で指された方向を見る。
黒髪の…男?
「またいたいけな男の子?そろそろ女に目覚めたら?」
「お前の何処がいたいけな男の子だったってんだ?あと女には不自由してない。」
銀八にしっかりツッコミを入れつつ、高校生にしてはすごい発言をした。
「先生、今時の子ホント怖いんだけど…」
そういいながら、元彼氏が次にねらう子はどんなものなのかと見定めた。
身長はすらっと伸び痩せ過ぎず、太過ぎない。
漆黒の黒髪で自分とは違い、直毛。
目つきは鋭くて、気難しそう。
「あ~…ずいぶん美人なこだねぇ。思いっきりモテそうで…ノーマルっぽくない?」
俺もノーマルだけど。
俺は、そゆことに慣れたって言うか…あの子は絶対そういう世界があることさえ知らなさそうでしょ。
「まあ、待て。それだからいいんだよ。分からなさそうなのが一番」
「は?」
すたすたと高杉は黒い綺麗なものに近づいて、その目の前でイキナリ言い放った。

「つきあってくんねぇ?退屈させねぇから。」

はぁああ???!!!!

俺でも思わず心の中で叫んでしまった。
いくらなんでも公衆の面前でそれはないでしょ!
俺、教育って仕事に自信なくしてきた!やめようかしら!
そう目の前の光景に唖然としていたら、相手は。

「いいぜ?俺でいいなら。」

ちょっとまてぇええ!
ツッコミを入れるしかない。
えっ!君それでいいの?!
ほら!隣に居た女顔のお友達だっていいんですかィって聞いてるぜ?!
は?いいも悪いもないだろ…って真性ですか君は真性だったんですか?!
人は見かけによらないって小学校の先生言ってたの思い出した!
先生教えてくれてありがとう!!

俺は顔には出さないが、今までで一番動揺していたと思う。

ぐい、と高杉はその黒い子の肩をつかみ、俺の方にやってきた。

そして、
「こいつ、俺の彼氏。土方十四郎な」
にやっと笑って俺に紹介した。

「…はぁ??!!!!」

思っても居ない方向からその声は聞こえた。
名前は…ひじかたとうしろうクン。
どこのクラスの子なんだろう…
「彼氏ってなんだよ!」
「お前、いいっていっただろ?」
な?先生も見てただろ?と高杉は俺にふってくる。やめてほしい。
目の前で言い合いが始まった。
言い合いと言っても、片方しか熱は入っていないが。
「おまっ!どっか出かけるからついて来てくれって意味だろ?!かれ…彼氏ってどういうことだ!」
「………」どうやらベタな勘違いだったようだ。ひじかたクンもパニック状態だ。
「…俺は本気だぜ?」
高杉はひじかたクンの肩に、なだれかかっている状態。当然二人の距離は近い。
目の前で真剣な顔で(少し悲しそうな演技も入っている)そう言われて、ひじかたクンは罪悪感を顔に浮かべた。
「すまねぇ…お前の気持ち…冗談かと思って…」
あらら。驚いた。本当に素直なのねこの子…
汚してはいけない存在って感じ。
「分かってくれたらいいんだよ…」
耳元で高杉はそう囁いたのを俺は聞いた。
びくっ!とひじかたクンの肩が跳ねたのを俺は見逃さなかった。
そうすると、どんどん顔が赤面していき、はなせと高杉に何度も要求した。
俺は、女の子みたいな反応するなぁとまじまじと見て思った。
「せっ…先生も今の高杉の冗談ですから…!本気にしないで下さい!」
初めて黒い瞳が俺をみた。
顔は耳まで真っ赤で、俺に忘れろと懇願する。
赤面しているせいで心なしか、瞳に潤んだものが見受けられた。
守ってあげたいってこんな感じの子の事だよねぇ。
自分に告白をする女子は大抵、がつがつした子ばかりだったのでこういうタイプの女の子(この子は男だが)は珍しい。
しかたない、と俺はため息を吐く。(高杉の遊びに巻き込まれるのが面倒だった)
「高杉、困ってるから放してあげなさい」
俺に言われた高杉は遊び終わったと思ったのか、簡単にするりと放してすたすたと言ってしまった。
少し、胸を撫で下ろしてひじかたクンを見た。
「楽しかったぜ土方~またなぁ」 
「またなんて絶対ねェ!!」
土方は後姿の高杉に大声で怒鳴っていた。
周りの人はなんだなんだと注目する。俺まで注目された。
「廊下では静かにね、ひじかたクン」
まわりの迷惑の事を考え、ひじかたクンを たしなめた。
ひじかたクンは くる、と振り返って、ぺこりとお辞儀をした。
「せんせい、ありがとうございました。」
あらあら。礼儀は正しいのねぇ。育ちがいいのだろうか。俺は感心した。
「授業も始まるから、もう自分の教室もどんな?」
いいから、と俺はひじかたクンを促す。
「………?」
「…?だから、自分の教室…」
「先生は行かないんですか?」
「?俺?俺は今から自分の受け持ちの子たちのところに行くよ?」
HRあるし、と付け加えた。
「……………」
「え?何?ていうか、ホントに遅れ…」
俺は時計を見て、あと数分だったので焦った。
この子美人だけど、じれったい!
「先生、俺何組か知ってます?」
マンモス校のこの学校で全員の生徒を覚える先生はすごいと思うけど。
「…?いや、知らない…」
「…………今ってもう5月になりますよね」
そろそろ皆新しいクラスに慣れはじめるころだ。グループなども出来始める。
「よくわかんないけど、歩きながらでいい?」
本気で遅れそうだった。
いつのまにか、この子の女顔の友達も居なくなっている。
二人で並んで2年の教室に向かった。
本当に綺麗な子だなぁと思う。
まだ伸び盛りであろう身長は俺のちょうどアゴあたりにある。
髪の毛はさらさらとしていて、なでてみたいなぁと思う。
ぁあ…こういう黒髪の女って俺みたいなのに寄って来ないんだよなぁ。
うわぁ…腰ほそい…何食ってんだろ。
もんもんと色々な考えがめぐった。

「先生着きました。」

そういわれて、はっと我に返る。
そこは自分の受け持ちのZ組のクラスの前だった。
「ありが…」
俺が礼を言う前に、がらっと勢いよくひじかたクンは扉を開けた。
あれ?そこまでしてくれなくても俺自分で扉くらい開けられるけど?
ひじかたクンがZ組に入っていくのが不思議でたまらなかった。
教室をのぞくと、ひじかたクンが前から3番目の席に座った。

ひじかたクンって俺の受け持ちだったの??!!

そのとき、雷を打たれたように俺は突っ立っていたと思う。
後から、土方にちゃんとクラスの生徒くらいは把握してくださいと起こられる羽目になった。

クラスにこんな美人な子がいるとわかっていたら、俺だって当然資料だって喜んでみた。
女でも男でも美人な子は目の保養だ。
やっかいなZ組の担当ということだって、少しは憂鬱さが軽減されたはずだし。
なぜ教えてくれなかったと、坂本やお登勢を責めた。
お前が悪いんだろうと返されたが、俺は腹が立っていた。
だって、2年生になったばかりで新しいクラスでやっていけるだろうかと不安を募らせる土方や、
2年生での新しい友達が出来、嬉しさに頬をそめる土方や、
今まで分の、俺時の土方の授業態度などを見逃したんだぞ??!!
坂本にわめいたら、「おんしがそんなことで怒るなんて珍しいきに~」
いいのぅ。久しぶりに輝いてる目を見たと、言い出した。

…確かに俺は一体どうしてこんなことで急に怒りがこみ上げたのだろう。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

俺はいつも、お登勢の説教や、坂本のおりょう先生話などを避けるために屋上に逃げ込んでいた。